こんにちは、獣医師のあさぬまです。
最近は朝晩冷え込むことも多くなりましたね。
北海道では初雪も降ったようですが、そろそろ冬の足音が近づいてきているようですね⛄
さて、先日院内で行われた救急セミナーに参加しました。
救命救急の最前線で働く先生のセミナーはいつも勉強の連続です。
今回のテーマは、
「人工呼吸」についてです。
人工呼吸とは、人工呼吸器を用いて意識下あるいは無意識下の人間あるいは動物の呼吸を補助することです。
人の場合は様々な方法がとられるのですが、動物の場合は、基本的に麻酔をかけて、『無意識下』で行う人工呼吸のことを指します。
『自分でする呼吸』と『人工呼吸器にさせられる呼吸』は一緒だとおもいますか?
実は似ていても全く異なるものです。
自分でする呼吸は息を『吸い込む』呼吸なので、自然に均等に肺が膨らみます。もともと血液の流れが盛んな部分にしっかりと血液が向かうので、
効率よく、酸素を取り込み、二酸化酸素を吐き出すことができます。
一方で、機械でさせられる呼吸は、『押し込む』呼吸です。風船に空気を入れるような方法で、息を吐き出すときは、
どれだけ膨らんだかによって、勝手にしぼんで空気が出ていくように吐き出します。
膨らみやすい部分が優先的に膨らむことになるため、必ずしもその部分に空気がたくさん入るわけではなく、非効率的です。
人工呼吸器につなぐことで肺炎を起こしたり、肺をさらに障害してしまうことも知られています。
ではなぜ、人工呼吸器につなぐのでしょうか??
答えはシンプルで、つながないと苦しいからです!
肺の病気や心臓の病気の影響で、自分の力ではうまく呼吸できなくなってしまう子がいます。
酸素は生き物に絶対必要なので、呼吸ができないといつかは酸素不足に陥ります。
また、二酸化炭素は動物に有害なので、うまく換気ができないと、二酸化炭素がたまりすぎてしまい、心臓が止まってしまいます。
その状態を打破するために、人工呼吸器につなぎ、酸素化と換気をサポートします。
その間に、元々の病気を治すための時間稼ぎです。
人工呼吸器にはいくつかの欠点があります。代表的なものをご紹介します。
①治癒率は、もとの病気の重症度と種類による
呼吸困難を起こすに至った元の病気が比較的早く治せるものであれば予後はいいです。
一方で治せない病気で呼吸困難に陥ると、治すことが困難です。
例えば、心臓病から起こる心原性肺水腫は比較的早く病気のコントロールが可能なので、予後は比較的良いです。
一方で、重度の感染症や腫瘍による悪化は、治せないあるいはかなり長期間の人工呼吸器が必要です。
②治療に時間がかかり、費用も高額になる
人工呼吸器につなぐ期間は最短で数日、最長は1~2週以上です。
その間は動かないようにずっと麻酔をかけておく必要があります。
そこまで頑張っても人工呼吸器の治療成績は決して良くないのが現状です。
それでも、人工呼吸器の設定の仕方やモニタリングすべきことなどを勉強することができたので、
少しでも危険な状態の動物の救命に役立てたいと思います!