SUBシステム(尿管結石用デバイス)外科セミナー
2025年01月13日
こんにちは、獣医師のあさぬまです。
2025年を迎え、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
私は、1月からセミナーや研修が多く、病院にいない日が多いです…。ご不便をおかけしますが、
しっかり勉強し、少しでもいい医療につなげられるようにしたいと思います!
今回は、日本大学で行われたSUBシステムのドライラボ実習に参加してきました。
SUBシステムとは、犬や猫の尿管閉塞(尿管結石など)に対し実施される手術方法の一つです。
尿管が閉塞すると、腎臓から尿が排泄できなくなり、
腎不全、食欲不振、嘔吐、元気低下、疼痛などの症状が出ることが多いです。
血液検査で腎臓の数値の上昇を確認し、レントゲン検査やエコー検査で、腎臓や尿管の状態を把握することで診断します。
レントゲン検査やエコー検査で尿管閉塞が診断できる精度はおよそ90%とされていますが、
検査者の技術、動物の性格や体格、胃腸内の食事や便の残存具合によってその精度は変化します。
尿管の閉塞を認めた場合、緊急的に治療を行う必要があります。
・治療法
①内科治療:
点滴や、鎮痛薬、尿管の収縮を抑える薬などで尿管結石が流れてくれることを期待する治療です。
しかし、物理的な閉塞に対し直接作用するわけではないので、治療が失敗に終わってしまうこともあり、
海外では内科治療の場合は、30%程度の死亡率が認められるとされています。
②外科治療:
結石や狭窄による閉塞を取り除くことで、腎臓の負担を改善する治療です。
根本的な治療で、5日以内に手術が行われた場合は、100%近い機能回復を期待することができます。
しかし、40日以上経過してしまうと、機能回復は望めません。そのため、診断後早期に実施する必要があります。
手術方法は、
尿管切開(結石除去)、ステント治療、尿管膀胱吻合(尿管と膀胱をつなげる手術)などがあります。
手術の合併症発生率は、方法により差がありますが、25~8.5%程度で、再手術が必要なものは13%程度とされています。
特に猫の尿管は1mm程度しかなく、縫合する際にも、髪の毛くらいの糸で縫合するため非常に高い技術が必要です。
そのため、特に高齢の動物やほかに疾患を抱えている動物、また結石や閉塞が複数個所存在する場合は、実施が困難な場合もあります。
そこで開発された手術システムがSUBシステムです。
SUBシステムは腎臓と膀胱にそれぞれカテーテルを挿入し、それを皮下のポートでつなぐ手術方法です。
つまり、生体の尿管のほかに、腎臓と膀胱をつなぐバイパスを人工物で設置するという方法です。
利点は、
・手術時間が短い
・(しっかり学習すれば)短期的な合併症が少ない
事です。
一方で欠点もあります。
欠点は、
・コスト(高い)
・人工物を入れるため感染症を引き起こすことがある
・定期メンテナンスが必要(1~3か月ごと)
・数年後に再閉塞する可能性がある(他の手術も同様)
です。
そのため、SUBシステムの実施には、『しっかりとした学習(セミナーでの理論の習得や実習)』、『X線透視装置の導入(設備)』が必要不可欠です。
当院でも以前からSUBシステムを用いた手術は実施しておりましたが、SUBシステム自体が現在もアップデートをされ続けている製品であるため、
定期的なセミナー参加が推奨されています。
今回は、SUBシステムのバージョンが3.0にアップデートされ、再度勉強しなおすことができてよかったです!
SUBシステムは完璧な方法ではなく、他の手術方法と同様に、一つの選択肢となるものです。
当院では、X線透視装置を導入しているので、SUBシステムの実施を安全に行うことはもちろん可能です。
また、手術用の顕微鏡を用いた、尿管の切開および吻合手術にも対応しておりますので、
その子に応じた最適な手術方法をご相談の上、実施しておりますし、今後もそうしていきたいと思います!!
もちろんSUBシステムにも合併症は報告されていますし、100%安全な方法はありませんが、1%でも元気になる可能性を高め続けていきたいと思います✨
もし、尿管結石や尿管閉塞でお困りの場合は、スタッフまでお気軽にご相談ください!
写真は会場となった日本大学です。
久しぶりに(人生2回目かも)江ノ電に乗って大学まで行きました🚃