JBVP
2025年10月07日
こんにちは、獣医師の佐久間です。
先日、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)の年次大会に参加してきました!
今大会は様々な分野のセミナーを受けることができ、内分泌・腎泌尿器・循環器・画像診断のセミナーを受けました。
その中で画像診断の講義を紹介します。
今回の講義では、腹腔内の血管走行について解説があり、その中で門脈体循環シャント(Portosystemic Shunt:PSS)が紹介されました。PSSとは、本来肝臓に流入して代謝・解毒されるはずの門脈血が、肝臓を経由せずに全身(体循環)へ流れてしまう異常な短絡血管のことを指します。肝臓への血流不足による小肝症、毒素(アンモニアなど)の全身循環による高アンモニア血症、および総胆汁酸(TBA)の高値などが認められます。
日本で報告されているPSSのシャントタイプの約7割は、従来脾静脈からの短絡と考えられてきました。近年の報告ではそれより末梢の左胃静脈からの短絡が主である可能性が示唆されています。
2024年に発表された1082例の大規模研究では、短絡血管の約95%が左胃静脈起始であったと報告されています。外科手術を行う際に「どの静脈から短絡しているか」を正確に把握することの重要性を改めて示しています。
PSSは日常的に遭遇する疾患ではありませんが、腹腔内血管の解剖を正確に理解しておくことは診断や手術計画において極めて重要です。今回の講義を通じて、血管解剖の理解が臨床判断の基盤となることを再確認しました。