VES年次大会in北海道
2024年08月17日
こんにちは、獣医師のあさぬまです。
先日は大きな台風が近づいてきました。
停電などの被害にあわれた方、大丈夫でしょうか?
今後も気を付けていく必要がありそうですね…。
先日、北海道で行われた学会に参加してきました。
麻酔や集中管理にかかわる学会だったのですが、初開催となった今回のテーマは『呼吸管理』でした。
いくつかセッションがありましたが、
①犬や猫の肺炎
②症例検討
③挿管管理
④挿管時のピットフォール
⑤ARDSと肺炎
が今回のセッションでした。
その中でも、①犬や猫の肺炎のお話をさせてください。
『肺炎』という診断名は、比較的よくつけられますが、よくわからないから全部肺炎。と診断されていることも多いです。
肺炎は、感染性肺炎(主に細菌)、誤嚥性肺炎、間質性肺炎などに分類されます。
感染性肺炎はどの子でも起こりえる疾患ですが、多くの場合は、膿は少し重いので、レントゲン検査では、下方向に変化が強く生じることが特徴です。
誤嚥性肺炎は特に高齢の動物で起こります。口の中の細菌が原因になってしまったり、嘔吐したものを吸引してしまうことで生じます。手術後に起こる場合や、発症の直前に嘔吐などの兆候がある場合が多いです。これも、感染性肺炎と同様に、レントゲン検査では下方向に変化が出てくることが多いです。
ただし、誤嚥の場合は、寝ている向きや姿勢によっても吐物が流れる方向が異なるので、一概に下方向とは言えず、
中には片側だけ。というような分布をします。
肺炎の中でも、一番難しい病気が『間質性肺炎』です。
間質性肺炎、あるいは間質性肺疾患は、様々な病気の総称です。
人では、特発性肺線維症、好酸球性肺疾患、過敏性肺症など多数の病気が分類されます。
診断には病理検査(肺を一部切り取って検査)や、気管支内視鏡検査が必要ですが、そのどれも麻酔が必要であり、
多くの施設では実施が難しいことが現状です。
そのため、動物では人ほど病態が解明されておらず、診断、治療ともに非常に難しい病気です。
いくつか動物でもわかっている病気もあります。
・特発性肺線維症(IPF)
ウェスティーに好発することが知られている疾患です。
人では予後が非常に悪い病気で、治療困難ですが、ウェスティーの場合は、人と病態が異なることが多く、
同じ診断名がついていますが、ステロイド治療でやや改善することもあり、寿命も人ほど短くありません。
一方で、猫でも好発しますが、猫では病態が様々で、肺癌との関連が示されているものもあり、
予後は要注意な疾患です。
・通常型特発性肺炎(UIP)
ペキニーズで好発することが知られています。
人と同様に有効な治療法がなく、予後が非常に悪い疾患です。
中央生存期間も40日程度と報告されています。
・特発性器質化肺炎(COP)
レントゲン検査での病変は派手だが、人、動物ともにステロイドに対する反応がとても良く、著効する。
間質性肺疾患では珍しく、『治る』間質性肺疾患ともいわれる。
難しいとされる間質性肺疾患ですが、近年はCT検査で特徴的な所見を認めることもあり、
徐々に診断される機会が増えています。
ただし、呼吸が苦しい動物に対しCT検査をすることも容易ではなく、設備や技術が必要です。
ですが、呼吸困難な動物では、治療の遅れが致命的な結果を招くこともあります。
当院でも、非典型的な所見を持つ動物では、極力CT検査を行い、早期診断に努めています。
もちろん、苦しいという症状を起こす病気は、心臓病や貧血など様々ですので、
呼吸器以外の多角的な視点の検査は必須です。
何かお困りのことがあれば、スタッフまでお気軽にご質問ください。