院内歯科セミナー
2025年02月27日
こんにちは、獣医師のあさぬまです。
だんだん春の陽気になってきましたね🌸
まだまだ朝晩は寒いので、寒暖差に気を付けたいですね!
先日、院内でおこなわれた歯科セミナーに参加しました。
歯科セミナーは去年から行われているものですが、動物の歯科分野はまだまだ未発達な部分も多く、
病院によってやり方や考え方が異なる分野です。しかし、それは標準的な方法が「ない」のではなく、「浸透していない」だけで、
昨年から歯科の専門医の先生に教わることで、院内でもメキメキ歯科治療や歯科疾患に対する考え方が向上しています✨
歯のトラブルに悩む犬や猫は非常に多いので、どんどん還元できるように頑張りたいと思います!
今回のテーマは「抜歯の適応」でした。
前回のテーマの続きでしたが、抜かなければいけない歯、抜かなくてもいい歯の違いについて学びました。
多くのことを学びましたが、普段目にすることが多いトラブルのみ紹介します。
〇 乳歯
乳歯は「抜かなければならない歯」です。
そのうち抜けるから…と思われる方も多いかもしれませんが、近年では短頭種や小型犬の飼育頭数が増加し、
昔に比べ顎が小さい犬が増えています。
本来、乳歯は永久歯に生え変わるタイミングで抜けてしまうので、乳歯と永久歯が同時に生えることはありません。
しかし、同時に生えてしまうと、本来の位置に永久歯が生えられないので、歯並びが悪くなってしまいます。
結果、将来的な歯周病や、怪我の原因になります。
また、乳歯はなるべく若いうちに抜く必要があります。歯の種類にもよりますが、生後4~6か月で抜く必要があるので、
もし、不妊(避妊、去勢)手術を検討していない場合や、生後1歳程度で手術を考えている場合は、
乳歯のみ抜く手術を実施することをお勧めします。
ここまではシンプルなのですが、実は乳歯は生えていない部分にも注意が必要です。
埋没歯といって、見た目上歯が存在しなくても、歯茎の下に歯があると、加齢とともに、顎の骨が溶けてしまうことがあります。
永久歯が生えていれば問題ないですが、乳歯も永久歯も生えていない部分に関しては、レントゲン検査で、歯の有無を確認し、
埋没歯であれば抜く必要があります。
このように見た目でわからないこともあるので、生後4-5か月で必ず、病院を受診してください✨
ちなみに猫では乳歯のトラブルはかなり少ないです。
〇 歯周病
歯周病で歯を抜かないといけないといわれた。
という経験は犬の飼い主様であれば一度はあるのではないでしょうか?
確かに進行してしまった歯周病は残すことが非常に難しいので、抜歯の対象です。
しかし、軽度の状態であれば丁寧なクリーニングで残すことが可能かもしれません。
歯と歯茎の間には歯周ポケットがあります。その部分が深くなると歯周病が悪化しやすくなります。
麻酔下でのクリーニングでその部分の歯石を除去し、古く悪くなった歯茎の組織を一部除去することで、歯とその周囲の歯茎を健康な状態に戻します。
そのうえで、しっかりと自宅での「歯磨き」を行ってもらいます。
半年程度で歯磨きの効果の確認と、歯周病の進行具合のチェックを目的に再度麻酔下で歯科処置を実施します。
自宅での歯磨き&定期チェックのための麻酔下クリーニング
この二つが徹底できてこそ、歯周病の歯を残すことが可能になります。
頻繁な麻酔を不安に感じる方もいると思います。
もちろん、全身麻酔にリスクがないわけではありません。しかし、定期的なクリーニングであれば歯はきれいに保てていることが多いので、
麻酔時間は少なくて済みます。また、毎年歯科クリーニングを行う子の方が、行わない子に比べ、18%長生きだったというデータもあり、
必ずしも頻繁な麻酔が悪いとは限りません。
ただ、高齢で何度も麻酔をかけられない子や、自宅での歯磨きが困難な子では、歯を残すことで、
他の歯を悪くしてしまう可能性も否めないので、あえて抜歯を選択し、一回の治療で終了させてあげることもあります。
いずれにしても、飼い主様の希望に照らし合わせ決めていく必要があります。
今回は犬がメインのテーマでしたが、猫では歯磨きを嫌う子が多いということ、口内炎になりやすいということから、
特に高齢になると歯のトラブルが急激に増加します。
基本的な考えは犬と同じで、定期的なチェックとクリーニングが必要です。
悩んだらまずご相談ください!