RECOVER実習
2022年12月18日
こんにちは、獣医師のあさぬまです。
先日、東京で行われたRECOVER実習に参加してきました。
ところでみなさん、『RECOVER』ってご存じですか?
〇RECOVERとは
世界基準の心肺蘇生~獣医蘇生再評価運動(RECOVER)の目的は、
【獣医療における最新かつエビデンスに基づく統一したCPRガイドライン】を提供し、
救急獣医療における治療標準を上げるためにそのガイドラインを広く拡散させること、
そして【心肺停止に至った犬猫の転帰を改善】させることです(RECOVER webサイトより抜粋)。
人の心肺蘇生(CPR)では明確なガイドラインが存在し、それに基づきCPRを実施することで救命率が上昇することが知られています。
犬や猫でも同様のガイドラインを作成し、CPRの救命率を向上させるための運動があり、それがRECOVERです。
RECOVERは講義と実習からなっており、私も講義は3年ほど前に終えているのですが、その後の実習が、
コロナ禍の影響で実施されず、今回ようやく再開し、実習に臨むことができました。
国内外から救急救命の第一線で働く、様々な講師が集合し、とても緊張感のある実習でした。
〇心肺蘇生(CPR)とは
CPRには、その場ですぐに行うべきBLS(一次救命処置)と病院で薬物などを用いるALS(二次救命処置)があります。
動物の場合は、救急車がないことや、もともと体調が悪い子でCPRが必要になることが多い状況などから、
BLSとALSはほぼ同じタイミングで行われることが一般的です。
BLSとは、気道確保と、胸部圧迫で成り立ちます。
胸部圧迫は、小型犬や胸の深い犬(ピンシャーやボルゾイなど)であれば、心臓の直上を、
大型犬で胸部が丸い犬(レトリーバーなど)であれば胸の一番高い部分を圧迫します。
両手を重ね、肘をまっすぐにし、体幹を使って胸が1/2~1/3程度沈むように圧迫します。
圧迫後は完全に再度胸が完全に膨らむように圧迫を解除し、100~120回/分のスピードで圧迫します。
30回圧迫したら、動物の口を完全にふさぎ、鼻を口で覆って、頸を伸ばすように気道を伸ばし、2回大きく息を吹き込みます。
一方で、ALSは病院で行われる方法で、
薬剤の投与を決められた周期で行います。
もちろん、人工呼吸や、胸部圧迫は継続しますが、人工呼吸は気管挿管を行い、6秒に1回のペースで行い、
自己心肺の再開を目指します。
しかし、動物の場合、病院外で心肺停止に陥った場合の救命率は非常に低く、
実際、飼い主様向けのアンケートでは、自宅で動物が心肺停止に陥った場合に、どうしたらいいのかわからない…。
という方が90%以上にのぼるようです。
実はそういった思いは、飼い主様だけではありません。
消防士や救急救命士の中でも、70%以上の方が動物に対して救命処置を実施してあげたい!
と思っていただけているようです✨
そこで、消防士と獣医師がタッグを組んで生まれた団体が、『日本ペットBLS防災学会』です。
この学会では、ペットに対するBLS(一次救命処置)の普及活動をしており、
その一環として、飼い主様向けの資格の案内がされています。
自宅で大切な家族であるペットの身になにかあった場合、病院に連れてきていただくまでの処置が鍵になる可能性があります!
もし、少しでも興味を持った方がいれば、リンクを貼っておきますので、ぜひのぞいてみてください
↓
https://congrant.com/project/jspbb/5275
ちなみに、RECOVER実習は、実習のみならず、きちんと理解できているかを確認するため、
シュミレーターを使ったテストがあります。
5人でチームを組んで、症例を模したCPRを実施。
無事に救命に成功すれば、合格となり、RECOVERのライセンスを取得することができます!
当院からは、浅沼、森本の二名が参加。
別々のチームで実習を行いましたが、二人とも見事に合格😊
そろってライセンスを取得することができました!
動物業界で、RECOVERのライセンスを持っている獣医師はまだまだ少ないですが、
少しでも動物の力になれるように一層頑張りたいと思います!!
実習は、このように心肺蘇生練習用の模型を使って行われます。